物語の舞台は十六夜市(いざよいし)。二百年の歴史を抱いた古都。
レトロな建物の間を路面電車が走り、商店街から角一つ曲がるとひっそりと神社やお寺が佇む古い町。
道は狭くて入り組んで、車がすれ違うのも一苦労。住む人の心もそれに似て、新しい物や者を容易に受け入れない。
少しばかり不便で頭の堅い町だけど、そこが良い、と古き日本を愛する観光客がぽつりぽつりと訪れる……そんな町です。

主人公、常磐晴彦(ときわ はるひこ)はこの土地で生まれ育ったごく普通の学生さん。
地元の十六夜学園に通う二年生、部活は「民俗風俗研究部」。十六夜市の空気に溶け込む古いモノやコトを集める、歴史的情緒あふれた……。
もとい。
地元の歴史や言い伝えを調べるだけの、地味〜な文化部の副部長をやっています。
夏休みの終わりとともに、年に一度の晴れ舞台、文化祭の準備に向けて気合いの入る今日この頃。
もともと十六夜市と言うのは古い町なだけあってお祭り好きな土地柄で、たかだか学校の文化祭ですらえらく盛り上がってしまうのです。

……まあ、やってることは去年と同じ。写真と文章の展示発表と小冊子の発行だけなんですが、とにかく気分だけは盛り上がっています。

民俗学の基本は足だ! 体力だ! と、先頭に立ち、やる気満々でフィールドワークに乗り出す晴彦くん。
わらわら、きゃいきゃい楽しげに後をついてく部員たち。
手分けして集めた話や資料を、駄菓子かじってお茶すすりつつまとめて行くうちに……。
ふと探り当てた身近な不思議。
どうやら十六夜市には「時間の流れ」に関する神秘的な体験、言い伝えが多いらしい。
過去の情景、時には幼い頃の自分を見てしまう『過去見(うしろみ)』。
とつぜん、周囲の時間が止まったり、逆転する『時惑い(ときまどい)』。
しかも時代が新しくなるにつれ、減るどころかむしろ増えて行く。

「思い違いだよ」
「既視感ってやつ?」
「ただの噂だろ」
「でもこれ、担任の先生から聞いた話だよ?」
「………何かいきなり話が生々しくなってきたな、おい」

この町には、何かがある。
それに気づいた時、おぼろげな過去の夢が。何気なく聞き流していたうわさ話が。
次第に確固たる実体を伴い、あふれだす。昔語りの裂け目から、日々の暮らしの中に。
学園祭の準備をしていたはずが、はたと気づけば時間が大変なことになっちゃって。
あれよあれよと言う間に大混乱のまっただ中!

果たして主人公は。
ヒロインたちは。
無事に学園祭を迎えることができるのでしょうか……。